恋して狼!~狼たちと籠の鳥~
「音楽きくんですね
あっ消さなくてもいいですただ訊いてみたかっただけですから」
慌てて訂正してみたが涼牙さんの指はタバコの箱に伸びていた。
「おまえ名前は?」
「涼牙さんが他人に興味もつなんて意外です」
「呼びにくい」
私に気を使ったのか窓を少し開けてくれている。
星とネオンが流れてくキラキラした街並みを車はすり抜けていく。
「如月アスカです」
相槌をうたないということは特に興味なんてないのだろう。
「このまま俺をどうしたいわけ?」
突然の質問にわけもわからず涼牙さんを見た。
「えっあっ・・・」
「行き先いってないけど」
「ごめんなさい」
「体力あまりもたないから」
「体、弱いんですか?」
「ただ非力なだけ」
涼牙さんはそれだけ言うといきなりハンドルを左にきった。
「家と逆です」
「おまえが悪い」
車は華やかな街とは正反対の簡素な住宅街にはいっていく。
車はマンションの地下駐車場に丁寧に停められた。
涼牙さんは何も言わず車を降りる。
「あの」
「車で寝るか?」
「そんなことしないですよ
さっきからそんな急かさなくても」
「俺、稼動限界3分だから」
ウルトラマンですかといいかけて後を追う。
エレベーターは最上階を示していて着いた部屋はホテルのスイートルームのようだった。
「おじゃまします」
「おやすみ」
この人はなんでこんなマイペースなんだろう。
ソファーに横になるなり寝息をたててしまった。
ポツリと残された私は立ち去るわけにもいかずとりあえず床に座った。
次第に眠くなってしまい気づいたらベッドの上だった。
そして隣には案の定、涼牙さんが寝ていた。
「なにもなかったんだよね」
涼牙さんは私をベッドに運んで力つきたんだよねたぶん。
「期待してた?」
薄目を開けてちらりと私を見る。
「してません」
「ふ~ん」
「まだ寝るんですか?」
「なんで?」
「なんでもないです
私、覚えてます?」
「タヌキ」
「もういいです帰りますから」
手首をひっぱられ体制を崩す私を涼牙さんは真っ正面から受け止める。
唇と唇が触れあう・・・キスなのかな
「これで俺から離れられなくなる」
私は頬が熱くなるのを感じた。
「・・・」
「俺はハイエナだからね
美味しいとこはぜんぶ奪うよ」
体力を使うことは他人に任せて美味しいところはすべて奪う
涼牙さんらしいやり方だ。
「狡いです」
「狡賢いだよ」
くすりと初めて涼牙さんが笑った。
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