Love Game
「誰も馬鹿なことなんて言ってない」
漣の顔から笑顔が消えた。
「てかさ、馬鹿なのは瑞希だろ」
「……」
怖い。
まるで射竦めるような目で私を睨んでいる。
「なに勝手にバックレてんだよ。なに1人悲劇のヒロイン気取ってんだよ」
『悲劇のヒロイン』って!
「だ、誰が悲劇のヒロインなのよ?」
あんまりじゃない。
「じゃあなんで俺を信じない?」
「……」
一歩一歩私に近づいて…
私は一歩一歩後退して…
あっ!
後ろはソファー
追い詰められ逃げることも…
思わずソファーに座り込んで。
漣も隣に腰を降ろし
「やっぱり瑞希は馬鹿だ」
強く強く抱きしめる。
「は、離して」
「いや!やっと掴まえたんだ。離さな い」
「漣…」
「何度、夢の中で瑞希を抱きしめたか。やっと抱きしめられたと思ったら目が醒めて、あぁ、また夢かって」
「……」
私も同じ夢を何回も見ていた。
夢の中で優しく抱きしめられて 『漣』って呼ぶと漣が消えていた。
『漣、漣…』
狂ったように探し回るんだけど何処にもいなくて自分の『漣!』 と呼ぶ声に目が醒めていた。
こうして本物の漣に苦しいまでに強く抱きしめられている今、幸せを感じる。
でも、漣の腕の中にいるわけにはいかない。
「離して」
もがいて、もがいて。