㈱恋人屋 TWICE!
「…どういうこと…?」

文面とにらめっこをする。でも内容は、確かに書いてあること以上も以下もない。文字通りだ。

「…紗姫、バッグは?」
「あっ、別に今はいらないかなって思って持ってきてないんだけど…。」
「車は?」
「車? …あぁっ!」

頭の中だけで家に戻ってみると、車の姿が見当たらなかった。記憶違い、ではなさそうだ。

「…ゴメン、ちょっと出かけてくる!」
「やめとけって、どこにいるかも分かんないだろ?」
「このままじゃダメなの!」

私は再び、あの時走った道を駆け抜けた。今こそタクシーを使いたかったが、自分の足を使うしかなかった。

「はぁ、はぁ…。」

道中の信号が、ほとんど赤い。中で直立している人が、私の方を見て薄く笑っているような気がした。

数メートル横を車が走っている。菜月くんと私の車がないか、自然と探してしまう。青がかった白のコンパクトカー。そんなに多くはないはずなのに、何故か車道を走っているのは私達の車とは違うものばかりだった。

「そうだ、テレビ…。」

ビルの上に映っているテレビに、明也さんならびに私達の車が映っていないかを探す。本当はケータイで見たいのだが、あいにくそのケータイもバッグの中だった。きっともう、今頃は明也さんの掌中にあるのだろう。

VTRを映していたテレビが、スタジオの画面に切り替わる。

「田松さんは、こういうことについてはどう思われますか?」

田松という名前に反応し、画面にくぎ付けになる。信号はもう青になっているのだが、私はその場から一歩も動かなかった。

「そうですね…。」

カメラは…明也さんを映していた。
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