㈱恋人屋 TWICE!
「…帝テレ…この近くだ…!」

帝テレというのは、ビルに映っていたテレビの放送局。帝京テレビというのだが、よく略して帝テレと言われるのだ。

そして、その帝テレが…このすぐ近くにある。

どこをどう走ったのかは自分でも覚えていないのだが、どうやらかなりの距離を走っていたらしく、もう近くには恋人屋の別支店もあった。

「よし…!」

私はすでに限界近くまで酷使した足を、もう一度起動させた。服ににじむ汗が、皮膚に嫌な感覚を与えている。

「もう少し…!」

帝テレの建物は、遠くからでも分かる大きな立方体が二つのビルの上に乗っている。何とも特殊な形だが、そのおかげか帝テレは大手のテレビ局にまで上り詰めた。

髪が視界を遮り、汗で湿った首にまとわりつく。…またゆっくりした時間があれば、美容院で切っておこう。

「…はぁ、はぁ…。」

文字にも声にも表すことが不可能な音が、喉の奥から荒れた息とともに出る。

「…待ってなさい…!」

何故か立方体を睨むように見上げ、私は自動ドアの奥へと足を踏み入れた。

「痛っ…。」

走り疲れたのか、すぐに何かにぶつかってしまった。

「あ、すみません。大丈夫ですか?」

どうやら、それは人だったらしい。優しげなその声のする方を向く。

「あ、大丈夫…です…。」

その人は…明也さんだった。
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