㈱恋人屋 TWICE！

ファイル19・最終依頼人・西郷龍馬

「…いよいよか…。」

カレンダーを見た私は、深いため息をついた。

「…頑張れよ、紗姫。」
「うん。」

身だしなみはバッチリ。忘れものもない。大丈夫だ。ドアを開けて、外の空気を吸う。

思えば、こんなこと当たり前のことだ。

当たり前すぎて、今まで気にとめたことなんてほとんどない。

だけどいざこうして意識してみると、今私がここにいてこういうことをしているのは、実は天文学的数字の確率によるものだということを実感させられる。

私は、奇跡的に今日を生きているんだ。

…じゃあ、今は何故私はこんなにセンチメンタルになっているのか？

その理由は…かなり衝撃的なものだ。

私のこれまでの人生が、一旦、終わる。

私の新しい人生が、明日から始まる。

そう思って、少しばかり緊張しているのだ。

…なんて言っても、分かりにくいかもしれない。

ここはあえて、端的に言おう。

…今日が、私の恋人師人生最後の日。恋人屋に私が仕事をしに行くのは、今日が最後。