㈱恋人屋 TWICE!
「そういう風に相談されることって、結構あるんです。仕事をしている人にとっては、仕事は生活の大部分ですからね。

でも、そんな時に決まって言う言葉があるんです。

『仕事が終わるわけじゃない。ちょっと穴が開くだけです。そのちょっとした穴を埋めてくれるのは、その新しい命なんです。』

だから、紗姫さんにも同じことを言います。」

こんな所で泣いたら周りの人に白い目で見られるのはほぼ確定事項なのだが、私の目からは大粒の涙が床へと落ちて行った。

「…ありがとうございます…紘輔さん…。」
「お礼なんていいですよ。これが僕の仕事ですから。…さぁ、まだ時間はありますし、頑張りましょう、紗姫さん。」
「…はい!」

相談したって何も変わらない、なんて思っていたけど、かなり変わった。

ただ私が揺らぎやすいだけなのかもしれないけど、少なくとも私は変わった。

もう二度とこの仕事ができないというわけじゃないんだ。

もうちょっと、頑張ろう。

そう思えるようになっていた。

「紘輔さん。」
「何ですか?」

…私は、紘輔さんのことを好きになっていた。会社のルールで決まっているのに。

でも、恋愛的な「好き」じゃない。

「私…紘輔さんのこと、好きです。もちろん、人間として、ですけどね。」

だから、まあいいか。
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