㈱恋人屋 TWICE!
「くっ…!」
「紗姫さん、菜月さんの手当てを早く!」
「はい!」

菜月くんの体に巻かれた縄をほどくと、手が血で汚れた。

「大丈夫?」
「ああ、どうにか…うあっ…!」

お腹の真ん中を必死で押さえる菜月くん。私を挟んでその反対側には、両手を上げて降伏の意志を示す社長がいた。

「時間、午後一時三十二分。殺人未遂および銃刀法違反の疑いで、緊急逮捕します。」

武装隊に囲まれ、社長は会議室を後にした。

「…これで、終わりましたよ。」

真守さんも会議室を出て行こうとしたが、最後に、振り返った。

「…菜月くん。」
「ん?」

私は他の社員がいることも忘れ、菜月くんに抱きついた。

「全部…終わったんだよ…。」
「…やったな。」
「うんっ…!」

まぶたの中に収まりきらなくなった涙は、止まることを知らないかのように滴り落ちて行った。

「…ありがとう、菜月くん。」

この言葉はちゃんと目を見て言わないといけないような気がして、体を少し離した。

「それと…これからもよろしくね。」
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