㈱恋人屋 TWICE!
クローゼットを開け、当分着ないであろう服を奥底にしまう。

「…えっと、これはここでいいよね…。」
「紗姫。」
「ん?」
「これくらいでいいんじゃないか? もうベビーベッドくらい入るだろ。」

服をたたみつつ、菜月くんが話しかける。

「…分かってないな~。」
「何だよ?」
「この子がもし大きくなってハイハイとかするようになった時にさ、周りに色んなものがあると大変でしょ?」
「それはその時に片付けたら…。」
「いつ来るか分からないでしょ、そんなタイミング。」

菜月くんは無言でうなだれ「参りました」と言わんばかりだった。…ちょっとヘコませすぎちゃったかな…。

「そうだ、菜月くん。」
「ん?」
「名前、決めない?」

この前の検査で、この子が女の子であることは分かっていた。

「前にもしなかったか、この話? …確か『紗月』って名前になった気が…。」
「それはあの場でのノリじゃん。今はちゃんと決めるの。」
「…。」

菜月くんの真剣な表情。こういう時、菜月くんはだいたいものすごい頭の回転速度で考えごとをしている。

「『可恋』って、どうだ? 『可能性』の『可』に『恋』で『可恋』。」
「何で?」
「…思えば、俺と紗姫の人生って、恋で彩られてきただろ? まぁ、恋人師だからこれからもだとは思うけど。」
「うん。」
< 123 / 130 >

この作品をシェア

pagetop