㈱恋人屋 TWICE!
「名前が男っぽいとか女っぽいとかって、関係ないのよ。親の思いがこもっていたら、堂々と胸を張っていればいいの。菜月の産まれた四月の月夜に、私は人生で一番の大切なものを得たの。だから、そのことをいつまでも胸に留めて、例え私にとってだけでも大切な存在でいてほしい。だから菜月は『菜月』なの。」

そんな意味があったとは…。親になったことで、その話が身にしみた。

「だからいいじゃない。可恋って名前は、男の子につけても女の子につけても、素敵な名前よ。ね、紗姫ちゃん?」
「…はい!」

親になった私は、一つ決めたことがある。

今までみたいに、すぐに泣かないようにしよう。

そう思って、私はさっきの話での涙を抑えていた。

その様子が滑稽だったのだろうか、お義母さんは私の顔を見ると口元を押さえて笑った。

「お義母さん。」
「どうしたの?」
「『お母さん』の先輩として、よろしくお願いします!」
「言われなくても力になるわよ。カワイイお嫁さんと、カワイイ孫娘のためなんだから。」
「紗姫ちゃん!」
「あら、まだお客さんがいるのね。じゃあ私は、これで失礼するわね。」

お義母さんが去って行くのとほぼ同時に、友也先輩達が入ってきた。

「あ、紗姫ちゃん…。」
「あら~、カワイイじゃないの~。」

京子先輩が近寄り、可恋の顔を覗き見る。

「皆も見てみなさいよ、カワイイから。」

先輩達がわらわらと近寄ったことにびっくりしてしまったのか、可恋は乳首から口を離すと泣き出してしまった。
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