㈱恋人屋 TWICE!
九時。

再び、ドアが叩かれた。

「どうぞ。」
「失礼します。」

入って来た弥頼くんは、服をキメて、より一層好青年になっていた。私の顔が赤くなるのが、顔が見えていないはずの私にも分かった。

「どうしたんですか? 顔赤いですよ?」
「えっ、あっ、これはその…。」
「ははっ、聞いてみただけですよ。」
「も~…。」

私は、弥頼くんに遊ばれているのか?

「よし、じゃあ行くよ。」
「はい!」

私達は、平日の道路を歩いた。

「…何かこうしてると、高校の頃思い出すな…。」
「どういうこと?」
「いや、僕高校時代は結構やらかしてたんで、この時間もよく遊んでたんです。」
「えっ、やらかしてたの?」

今のイメージとはあまりにも落差があって、にわかには信じがたい。

「軽く、なんですけどね。結構怒られたりもしてたんですけど、それも全然聞かずに遊んでました。」
「へ~…。じゃあ、何で今はこうやって普通に生きてるの?」
「…ちょっとしたきっかけがあったんです。今から、そのきっかけの場所に行きますね。」
「あ、うん。」

弥頼くんが私の手を握る。

「ちょっと迷いやすい場所なので、しっかりつかまってて下さいね。」
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