㈱恋人屋 TWICE!
「…。」

私はただその場に立ちすくんでいるしかなかった。

「…駅のホームに行かなかったこと、死ぬほど後悔しました。あの時、ちょっとでも話しておけばよかった。あの時、会ってれば良かったって…!

それが、きっかけです。あれ以来つるんでたやつとは縁を切りましたし、もう何年も会ってませんから…。」

弥頼くんが袖で自分の目のあたりをこする。

「あ、すいません…。みっともないところ、見せちゃいましたね…。」
「…そんなこと、ないよ。」

私は、弥頼くんを抱きしめた。

「弥頼くんは…本当によく頑張ったと思うよ…。こんな過去を一人で背負ってきて…。今の私だったら、絶対無理だし…。

だから、みっともなくなんかない。今の涙だって、今までためてきた涙でしょ? 私は…弥頼くんの、味方だからっ…!」

慰めようとして抱きしめたはずなのに、私の方が泣いてしまっていた。

「ははっ…僕の肩、濡れちゃうじゃないですか。別に、支店長の涙でなら、濡れてもいいですけどね。」
「…今の、減点だよ? 今は恋人同士なんだから、私のことは紗姫さんって呼んでよね。」
「はい!」

私達は再び手を繋ぎ、ホームに背を向けて歩き出した。
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