㈱恋人屋 TWICE!
「…やっぱり、最初のアレ…いらなかったですよね。」
「うん。十点落ちちゃったのは…そこかな。」

自分が自分じゃないような気がしていた。

何でだろう? 最初のヤツは、得点には含めないようにしておこうって思っていたのに。

ズルいんじゃないか? そう思っていた。

「…でも、気を落とさなくていいよ。」
「えっ…?」
「もう私はアレを知ったから、次弥頼くんとデートする時は、絶対百点満点をつけられると思うから!」
「…はい!」
「じゃあ、これからもがんばってね、弥頼くん。」

部屋を出て行く弥頼くんの姿が、初めて出会った時よりは大人になったように感じられた。

その帰り道。

「何か…久しぶりだな…。」

菜月くんは、今日は残業。私は一人だった。

思えば、菜月くんと一緒じゃないのは、もう何カ月ぶりのことだろう?

確かその時は、少し早めの初雪が降っていた。寒かったけど、家では菜月くんが待ってくれている。そう思うと、寒さが和らいだような気がしたんだっけ…。

少し遠い記憶に、思いをはせた。

…でも、今日は家に帰ってもしばらく一人だ。

「はぁ…。」

ため息が、心にぽっかりと開いた穴から抜けていった。

菜月くんの存在が、いつしか当たり前に思えていた。本当は、奇跡中の奇跡なのに。
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