㈱恋人屋 TWICE!
「早く来すぎたかな…。」

時計を見る。まだ、残業組が帰ってくる時間じゃない。

この会社では、残業する人達は「残業組」と呼ばれ、何人かで一緒に帰ることが多いのだ。

「やっぱり会社まで行こうかな…。」

でも、それで入れ違いになってしまうと元も子もない。

「どうしよ…。」

時間をもてあまし、駅でうろうろする私の姿は、周りから見るととても滑稽なものだろう。

「何やってんだ?」

ほら、早速言われた…って、え?

「そんな所でうろうろして…何か探してんの?」

後ろを振り返ると、菜月くんがいた。

「ななな菜月くん! …えっと、何でもないよ!」

ヤバい、暇そうにうろうろしてるの見られちゃった…。

「ま、別にいいけど。帰るぞ。」
「う、うん…。」

…よかった。

菜月くんと、会えた。

こうやって二人で並んで歩いていると…少し恥ずかしいけど、やっぱり、嬉しい。

迎えに行って、正解だった。後で、お母さんにお礼を言っておこう。

また一つ、天文学的数字の確率が増えた。
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