㈱恋人屋 TWICE!
暗い通路を、ゆっくりと進んでいく。

「…あのさ、腕こうやって掴まれんの、俺あんまり好きじゃないんだよな…。せめて手くらいにしてくれよな。」
「…でも…。」
「あ~あ、俺先に行っちゃうけどいいのかな~。」
「ちょっ、それだけは絶対にやめて!」

私は仕方なく、新の腕を掴んでいた手を新の手まで下ろした。

「このドアを開ける…と。」

ちょっと待って、とはもはや言う暇すらなかった。

「ギィィィィ…。」

ドアの軋む音が、恐怖を倍増させていた。心拍数が上がるのが手に取るように分かる。

「うおぉあぁ!」

その瞬間、ドアの向こうからおどろおどろしい叫び声をあげて何者かが現れた。

「きゃぁぁぁ!」

私の体は恐怖に拘束された。そしてその恐怖は、私の喉に作用し、私をただひたすら叫ばせていた。

…と、その時だった。

「えっ…?」

新が、私を抱きしめていた。

「新…。」
「しょうがない奴だな…。ビビりすぎなんだよ、紗姫は。」

…何よ。本当は優しいところあるんじゃん。

少しだけ、恐怖が和らいだように思えた。
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