㈱恋人屋 TWICE!
「…ありがと。」

私は少し頬を赤らめて言った。

あれ…? 何で私、顔赤くなってるんだろ…?

…いや、まさかね。まさか、新のことを好きになったとか、そんなんじゃないよね。だって新は、あくまでも依頼人。好きになっちゃいけないし、そもそも大学時代、そこまで好きだったわけでもない。

なのに…どうして?

「何か考えごとか?」
「あ、いや、何でもないよ。」

しかも、新に言われると、つい本心を隠したくなってしまう。新には、嘘なんてつけないはずなのに。

「紗姫。」
「ん?」
「何か…悩んでんのか?」

ほら、いとも簡単に本心を覗かれてしまった。やっぱり、心理学者ってすごい。

「…あのさ。」
「ん?」
「びっくりしないで…聞いて?」
「おう…。」
「私ね…。」

思えば、今まで色んな人の相手をしてきたけど、こんなことを言うのは初めてだ。

「新のこと…好き、かも。」
「…。」

沈黙。

「…あ、ゴメン、今の忘れて。私、菜月くんがいるのに、こんなこと言っちゃいけないよね…。」

後で菜月くんには謝っておこう。

「…紗姫…。」
「ん…?」
「じゃあ、俺からも一つ、いいか?」
「うん…。」
「俺…。」

新は呼吸を整えた。

「紗姫のこと…大学の時好きだった。…って言うか、今でも…好き。」
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