㈱恋人屋 TWICE！

荷物を持って、もう一度菜月くんのいる所へ行く。

「菜月くん。」
「おし、じゃあ帰るぞ。」
「うん…。」

私は、今まで感じたものとは別の恐怖を感じていた。

私は…どうなってしまうんだ？

リストラされる？　いや、それはない…はずだ。そう、信じたい。

盗聴器があったということは…私から、何かを聞き出そうとしている？

「菜月くん…。」

私は、菜月くんの腕を抱いた。菜月くんは、私の頭をそっと撫でてくれた。

「…どっか、寄ってくか？」

私達は、駅前の喫茶店に入った。

「…菜月くん。」
「ん？」
「その…リストラされた十五人って、誰なの？」

リストラ、という言葉は、自分の口から出たというのに重かった。

「役職も勤務先も、皆バラバラだ。でも、一つだけ共通点がある。」
「共通点…？」
「どの人も、前社長の味方だった。」

ゴクリ、と唾を飲む音が、いやに体内で響いた。

「紗姫。」
「ん？」
「…気をつけろよ。俺も出来る限り紗姫のことは守るけど、でも、一人じゃどうしようもないことだってあるからな。」