㈱恋人屋 TWICE！
ファイル16・私専用執事・仕村尽哉
今、私のことを「紗姫様」って言った…？

「あの…。」
「いいから早く！」

するとその人は、私の腕を掴むと、窓から私を引っ張り出した。

「ちょっと！」

そんなことしたら、足が汚れちゃ…。

「あれ…？」

私は、何故か靴を履いていた。

「こういうこともあろうかと、あらかじめ靴をこの場所に用意しておきました。」
「なるほど…って、そういう場合じゃないですっ！　一体どちら様なんですか？」
「ああ、申し遅れました。私、紗姫様の執事を務めさせていただきます、仕村尽哉(シムラ・ジンヤ)と申します。よろしくお願いいたします、紗姫様。」
「…執事…？」
「はい。今の紗姫様は、お一人で外出されるのは大変危険な状況にございます。そのため、私が紗姫様を…。」
「結構です。」

正直、こういうのは鬱陶しいだけ。小説とか漫画とかでよくある、キャッキャウフフなお嬢様生活なんて都市伝説。しかも…今は、誰とも話したくない。可能性としての話だが、テレビの取材班が送って来たスパイ的な存在とも受け取れる。

「お待ちください！」

その時、私は腕を掴まれた。

「この仕村、命に代えても紗姫様をお守りいたします。」

その目には、曇りはないように見えた。私を、本当に守ろうとしてくれているのなら…。

「…じゃあ、お嬢様っぽく呼ばせてもらうわね。」

一回やってみたかった、というのも、少なからず理由としてあげられる…。
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