㈱恋人屋 TWICE!
外が外なら、中も中。

「うわぁ…。」

誰しも一度は夢に見たであろう、きらびやかな豪邸が私の目の前に広がっている。不必要なまでに高い天井にはシャンデリアが吊り下げられ、足元にはふかふかの絨毯。そして壁には、教科書で見たことがあるようなないような絵画が飾られていた。

「紗姫様。しばらくここで、実をお隠しになっていて下さい。その間に、私があの騒動を鎮めてまいりますので。」
「そんなことできるの?」

私が尋ねると、仕村は右腕を体の前に持ってきて、そしてお辞儀をして答えた。

「私は、執事ですので。お任せ下さい。」

頼りになるんだな…。私は、瞬時に理解した。

「では、行ってまいります。何かございましたら、いつでもお呼び下さい。」
「分かった。気をつけてね。」

仕村が出ていくと、私はここを探検した。

いくつもの部屋に、分岐した廊下。壊したら破産すること間違いなしの彫刻に、イメージ通りのシカの頭の剥製。ここにある一つ一つが、俗に言う「お金持ち」のものだった。

「はぁ、疲れた~…。」

部屋を見て回るだけで、疲れ果ててしまう。しかも、軽く三十分ほど回っただけでは全ての部屋を見て回れないから驚きだ。

「…でも、悪くないか。」

子どもの頃ほどではないが、こういう生活への憧れがないわけではない。どのくらいここで過ごすことになるか分からないけれど、まあいいだろう。
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