㈱恋人屋 TWICE!
「…仕村。」
私はベッドから起き上がり、すぐ隣の仕村の部屋のドアを開けた。
「どうかなさいましたか、紗姫様?」
仕村は何やらややこしい書類を見ていたが、振り返って私を見た。オシャレなスタンドライトが、男にしてはきめ細やかな仕村の手元を淡いオレンジに照らしていた。
「その…眠くなくて。」
「コーヒーなどをお飲みになられたからではないですか?」
「確かにコーヒーはちょっと飲んだけど…でも、いつもは私、すぐ寝ちゃうの。」
仕村のまばたきの回数が多い。心なしか目も赤い。一日中メディア各局を回って、しかも私がお昼ご飯をどうするかと尋ねたらわざわざ戻ってきてくれたので、相当疲れが溜まっているのだろう。
「…ありがとね。」
「はい?」
「えっと…。」
ダメだ。こういう時に限って、うまく言葉が出てこない。こんな感じのシチュエーションは何度も経験してきたはずなのに、頭から打開策だけがするりと抜け落ちてしまっている。
「紗姫様。」
…仕村の腕が、私の体に回された。
「な、何して…。」
「失礼を承知でのことです。…紗姫様の言いたいことは、もう私には伝わっております。」
仕村の胸板に、私の顔が押し付けられる。
「ありがとね…仕村…。」
電気が点いているこの部屋にも、夜空の明かりは差しこんでいた。おぼろ月ではない。はっきりと輝く月だ。全然夜空なんて見ていないけれど、そのことは、見えている気がした。
私はベッドから起き上がり、すぐ隣の仕村の部屋のドアを開けた。
「どうかなさいましたか、紗姫様?」
仕村は何やらややこしい書類を見ていたが、振り返って私を見た。オシャレなスタンドライトが、男にしてはきめ細やかな仕村の手元を淡いオレンジに照らしていた。
「その…眠くなくて。」
「コーヒーなどをお飲みになられたからではないですか?」
「確かにコーヒーはちょっと飲んだけど…でも、いつもは私、すぐ寝ちゃうの。」
仕村のまばたきの回数が多い。心なしか目も赤い。一日中メディア各局を回って、しかも私がお昼ご飯をどうするかと尋ねたらわざわざ戻ってきてくれたので、相当疲れが溜まっているのだろう。
「…ありがとね。」
「はい?」
「えっと…。」
ダメだ。こういう時に限って、うまく言葉が出てこない。こんな感じのシチュエーションは何度も経験してきたはずなのに、頭から打開策だけがするりと抜け落ちてしまっている。
「紗姫様。」
…仕村の腕が、私の体に回された。
「な、何して…。」
「失礼を承知でのことです。…紗姫様の言いたいことは、もう私には伝わっております。」
仕村の胸板に、私の顔が押し付けられる。
「ありがとね…仕村…。」
電気が点いているこの部屋にも、夜空の明かりは差しこんでいた。おぼろ月ではない。はっきりと輝く月だ。全然夜空なんて見ていないけれど、そのことは、見えている気がした。