㈱恋人屋 TWICE!
「…。」

ここまで来たのに、いざ入るとなると足がすくんでしまう。

「紗姫ちゃん。」

お義父さんがポン、と肩に手を置いてくれた。

「大丈夫?」

私はまだ、菜月くんに会うのが怖かった。だけど…会いたかった。

「開けるよ?」
「…はい。」

病室のドアが開く。目の前には、まだ窓と壁しかない。だが、そのすぐ右には菜月くんがいる。

怖いけど…私は、一歩、また一歩、足を踏み出した。お義父さんの後ろに、ぴったりとついて。

「菜月。」

お義父さんがカーテンの向こう側を覗く。

「ん? 忘れ物か?」
「…ある意味『忘れ者』だな。」

菜月くんには見えない位置に隠れている私に、お義父さんは手招きをする。

「何してんだ、親父?」

一歩、また一歩、カーテンの裏側に向かうように歩き出す。

「…菜月くん。」
「…紗姫…。」

菜月くんの目は、いつもより少し潤っていた。
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