㈱恋人屋 TWICE!
ジェットコースターの前は、非常に混雑していた。

「やっぱり混んでますね…。」
「待ち時間は二時間…。さすがここの目玉って感じです。」

でも、せっかく来たからには乗らないと。遊園地に来てジェットコースターに乗らないなんて、カレー粉の入っていないカレーを食べるのと同じだ。

「…待ちますか、紗姫さん?」
「そうですね。」

会話が途絶える。

「…。」
「…。」

周囲では、楽しげな会話と、ジェットコースターからの絶叫が絶えず展開されている。

「…。」

そんな中無言なのが気まずくて、私は明也さんの手を握った。

「あっ…。」

明也さんの頬が、かすかに赤くなった。

「…紗姫さんの手、ちょっと冷たいですね。」
「そうなんです。私、冷え性で…。この時期でも冷たくなっちゃうんです。」
「女性は皆、冷え症に悩んでるものなんですね。…でも大丈夫です。」

明也さんはまっすぐ、私の目を見た。

「僕が、温めてあげますから。」

惚れっぽい私の性格は、こんなオーソドックスな言葉でも簡単に熱くなった。

「…ふふふ…。」

思わずこぼれた笑みに身を任せると、私の頭は明也さんの肩に乗っていた。
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