㈱恋人屋 TWICE!
「…。」

顔色が明らかに青いのが、自分でも分かる。

「…紗姫さん、本当に大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫ですっ、大丈夫!」

無理して笑ってごまかしても、頭皮から流れる冷たい液体の存在を隠さずにはいられなかった。

「汗、すごいですよ?」
「そ、そんなことないですって!」
「…やっぱり、乗らなきゃよかったですよね。すみません、僕のせいで…。」
「いえ、明也さんは悪くないです!」

相変わらず、私達は天空で座ったままだ。

「…紗姫さん。」
「は、はい!」
「…よかったら、僕の手でも握っておきますか?」

安全バーの間から、明也さんの手が差し伸べられる。

「手離してたら危ないですって!」
「ははっ、紗姫さんは心配性ですね。ちょっと手を離したからって、そんなことになるわけ…。」
「皆様、大変お待たせしました。これより、運行を再開いたします。」
「…えっ…?」

アナウンスが聞こえた。私達の角度から察するに、きっとかなり頂上に近い。明也さんの手は、まだ安全バーを握っていない。

「…ひぃやぁぁぁぁ!」

突然の落下に、明也さんが叫ぶ。私は怖すぎて声も出なかった。

横を見る。明也さんは両手を上げていた。…私には到底無理な芸当だ…。

「ひゃっほぉぉぉ!」

ジェットコースターに乗ってこんなにはしゃぐ男性を、私は大人になってから初めて見た。
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