【短編】 お見合い相手は高校生?!
「ご、ごめんなさい」
女の子は頭を下げて立ち去ろうとしたが、
「いいよ。付き合ってやる」
俺は彼女の腕を掴んで言っていた。
幸い、彼女は俺の顔を見ても自分のお見合い相手だとは気づいていないようだった。
それなら、今のうちに嫌われておこう・・・という考えが頭に過ぎった。
それに、俺が断ったら、他の奴にも言ってしまい、大変な目に遭いそうだから、放っておけないし。
一般的にかわいい部類に入る彼女に、『連れて逃げて』なんて涙目で言われたら・・・落ちない男はいないだろう。
まぁ、俺は例外だが。
「とりあえず、乗りなよ」
「は、はい」
彼女は、俺の顔を伺いながら、車のドアを開けた。
おそらく、今頃自分が言ってしまったことに後悔しているのだろう。
「シートベルトしてね」
「は、はいっ!」
俺が声を掛けると、慌てて反応する様子が面白かった。
男馴れしていないのが手に取るようにわかった。
「君、名前は?」
知ってるけど、聞いておかないとな。
「遥です」
遥は、俺の方に顔を向けながら小さな声で言った。
「俺は、翔(ショウ)」
チラッと遥の方に視線を送ると、顔を赤らめていた。
「で、どこ行きたい?」
「えっと・・・」
グゥゥゥ〜
「腹、減ってるの?」
「は、はい」
遥は、恥ずかしそうに、俯きながら答えた。
薄いピンクのワンピース――いかにもお嬢様といった感じの――のスカートの上で手を持て余していた。
「じゃあ、まずは腹ごしらえだな」
車の中は沈黙に包まれる。
「ファミレスでいい?」
「・・・・・・」
お嬢様だから、嫌か?
「嫌だった?」
遥の顔を伺うと、なにやらモジモジして、言いにくそうにしていた。
「いえ、私、初めてなので・・・」
「そ、そうなの?」
ファミレスにも行ったことないなんて、どんな暮らしをしてきたんだ?
清林女学院に通ってるんだけな、筋金入りのお嬢様ってことか。
そういうお嬢様の方が、俺みたいな奴をすぐに嫌ってくれそうだから、都合がいい。
「いこうか」
俺は近くのファミレスに向かって車を走らせた。