【完結】無口な王子様
圭は、甘いものが好きらしく、たくさんのケーキを目の前にさらに目を輝かしてた。
「んまい!」
相変わらず、口いっぱいに物を入れる。
そして、私の食べる姿を見る。
「そんなに見られたら恥ずかしいやん」
「だって、俺、奈緒が食べる姿好きなんやもん」
え?好き?
甘いものが、言葉まで甘くしてしまった??
私の胸がドキドキして、そばにいる人にはそのドキドキが聞こえそう。
しかも耳まで熱くなってきた。
「また取りに行こう」
圭は顔を真っ赤にして、行ってしまった。
今、『好き』って言ったよね?
期待しちゃうよ??
「これおいしそうやで〜」
さっきの言葉を打ち消すように、隆は再び大量のケーキを持ってきた。
「ほんまや!」
「一緒に食べよ!」
「うん」
制限時間ギリギリまでケーキを食べた私たちは、大満足で帰った。
「あ〜食べ過ぎた〜。太るぅ」
「奈緒は痩せすぎだから、もっと太った方がいいよ」
「え〜やだ」
「はははっ」
圭が急に笑い出した。
「何よ!人の顔を見て笑うなんて失礼やん!」
「ごめんよ。子供みたいでおかしかったから・・・ははっ」
まだ笑ってるし。
こんなに顔をくしゃくしゃにして笑うんやぁ。
その時私はこの笑顔を独り占めしたいと思ってしまった。
そして私は賭けに出た。
「こんな奴、お嫌いですか?」
もし圭が『好き』と言ってくれたらラッキーやし、困った顔をしたら、『なーんてね』と冗談にする。
圭の答えは?
「嫌いじゃないよ」
ビミョー。
言うなら『好き』って言って欲しかったな。
私は、なんとも返すことができず、結局それ以上の進展はなかった。
せっかく、圭の心の壁を崩せるような気がしたのに、私の間違った一言でまた壁ができてしまったような気がした。