【完結】無口な王子様
冬休みに入り、木下たちがトリプルデートを計画した。
「圭、ごめんな。今回だけ付き合ってくれよ」
この話を聞いた瞬間、また橋本さんに会えると胸が躍っていたが、そんな俺の気持ちを知らない木下は謝ってくれた。
「あぁ、いいよ」
内心はめちゃくちゃ喜んでいたのに、言えない。
「また、さっちゃんに会える!」
嬉しさを表に出せる隆が羨ましい。
こんな隆だから、てっきりもう二人で会ってるのかと思ったが、違うようだ。
「圭、頑張ろうな」
隆が俺の肩を叩く。
こいつ、俺の気持ちに気付いてる??
トリプルデートの場所は遊園地。
俺、苦手なんだよな・・・・。
でも、橋本さんの顔を見たら、そんなことは吹っ飛んだ。
日曜日ということもあり混んでいた。
入って半時間くらいで二組ともさっさとどっかへ行ってしまうし。
そんなことより、橋本さん、さっきから考え事をしてるのか、フラフラしてはぐれそうやし。
どこにも行かないでくれよ・・・・・。
俺は、「はぐれるから」彼女の手を取っていた。
俺、いきなり何してるんだ??
絶対に嫌がられる!
と思った瞬間、橋本さんは手を握り返してくれた。
正直、ホッとした。
ここで帰られたりしたら、しゃれにならへんし。
いろんなアトラクションを廻り、こんなに遊園地が楽しかったことは初めてだ。
「あっ、電話・・・」
橋本さんと繋いだ手を離す。
「木下から。もう昼だから、メシ食おうって」
「うん」
「じゃあ、行こうか」
俺は自然と手を差し出していた。
「あっ、圭って呼んでくれたらいいで」
「け、けい?」
橋本さんは、なんだか困ってる?
「嫌ならいいけど・・・」
俺としては、みんなに『圭』って呼ばれてるから、その方が慣れてるだけなんやけど。
「嫌じゃないよ。じゃぁ、私の事も奈緒って呼んでね」
「うん」
な、なお・・・・?
自分の顔が熱くなっていくのがわかった。
俺の中で橋本さん・・・いや、奈緒の存在がどんどん大きくなってきているのがわかった。
昼食後も奈緒と二人で過ごした。
やっぱり会話はないが、繋いだ手から気持ちが通じているようで、嬉しかった。