【完結】無口な王子様
「あ〜食べ過ぎた〜。太るぅ」
「奈緒は痩せすぎだから、もっと太った方がいいよ」
「え〜やだ」
奈緒はふくれながら子供のように言う。
「はははっ」
「何よ!人の顔を見て笑うなんて失礼やん!」
「ごめんよ。子供みたいでおかしかったから・・・ははっ」
久しぶりに人前で笑ったような気がした。
なぜか、奈緒の前だと自分が素直になれる。
だって、君は俺の意外な素顔にもついてきてくれたから。
あれ?奈緒が黙った。
しまった!俺が笑いすぎて、怒った??
俺が謝ろうとした瞬間、奈緒がゆっくりと口を開いた。
「こんな奴、お嫌いですか?」
えっ?
奈緒の表情は強張っている。
なんでそんなことを聞くの?
俺の答えは・・・・。
好きやで。
でも口から出たのは・・・・・。
「嫌いじゃないよ」
なんでこんなことしか言えないんや・・・・。
せっかく、奈緒がパスしてくれたボールを俺は、払いのけてしまった。
そして、奈緒の表情によって、彼女の俺への気持ちもわかったような気がした。
なんで、あんな寂しそうな顔をするんや?
やっぱりこんな俺はダメか?
俺は、やっと崩せそうだった壁を再び高く高く積み上げてしまった。
もう誰も入れないかもしれない・・・・・。