【完結】無口な王子様
バレンタインデー前日に理香と一緒に沙知の家へ行った。
「こんにちは〜」
沙知の1歳違いの弟の聡(サトシ)くんだ。
さすが、沙知の弟!って思わせるようなイケメン。
背も高いから、モデルでもできそう。
「姉ちゃんの友達って、美人が多いよな〜」
そして、お世辞も上手。
「でしょ?でも、理香には木下くんがいるし、奈緒も好きな人がいるからね」
沙知が笑いながら答える。一目で仲がいいのがわかる。
「理香さん、木下先輩元気っすか?」
「元気にしてるよ。サッカーは辞めたけどね」
「そうなんですか・・・もったいないなぁ」
理香の彼氏と聡くんは、中学のサッカー部の先輩後輩だったらしい。
「じゃあ、友達の家に行ってくるから、チョコよろしく」
と言って、聡くんは出掛けた。
雑談を終えて、私たちはチョコ作りに励む。
「奈緒、ケーキなんて気合い入ってるね!」
理香が私の肩を叩く。
そういう理香は、トリュフを作るらしい。
昨日、材料を揃えたので、今日は作るだけ。
・・・と言っても、私は初めて。
今まで好きになった人には、手作りしようなんて思ったことがなかった。
というより、チョコを渡したこともない。
でも、圭には自分で作って渡したいと思った。
自分でも、どうしようもないくらい料理が苦手なのがわかっているのに・・・・あのケーキバイキングの時の笑顔を見たくて・・・・私が作ったケーキを食べて、笑って欲しくて・・・。
沙知は、小さい頃からお母さんと一緒に作っていたようで、慣れた手つきで準備する。
あぁ、お菓子とかササッと作れる彼女っていいよね・・・私が彼氏だったら、めっちゃ自慢するわ。
私がチョコケーキにした理由は・・・・。
この前のケーキバイキングで、圭が食べたかったチョコケーキを割り込んで来たおばさまたちに持って行かれて、結局食べられなかったから。
私が作るから、お店のよりは味は落ちるけど、その分愛情を込めて作るからね!
沙知は初心者の私でも作れるように簡単な作り方を教えてくれた。
沙知・・・あなたはやっぱり女の私から見ても最高です!
「せっかく簡単な方法なんやから、奈緒が全部自分で作るんやで!」
沙知・・・・厳しい・・・・。
「返事は?」
「はい!」
沙知様・・・
「まず、チョコを荒く砕いて」
「荒く?砕く?」
「そうテキトーに」
私は沙知先生の言う通りに動く。
「できた?できたら卵白と卵黄に分けて」
「はぁい」
あれ?うまくいかない・・・・あっ、黄身が落ちたし・・・・。
「奈緒、こうやってみて」
沙知が手慣れた様子で、見本を見せてくれる。
こんな調子で、私のケーキ作りが始まった。