【完結】無口な王子様


「なんかね、音楽の先生が骨折したんやって。


それで、卒業式にピアノが弾けないから、頼まれて・・・」


「へーすごいやん」


声のトーンでは、関心がなさそうやけど、表情の柔らかさで、本心がうかがい知れる。


「でもね、いきなり言われて焦ってる・・・」


少し間を置いて


「頑張ってね」


と笑顔で言ってくれた。


「うん」って、私はこんな話をしに来たんじゃないんよ!


「あのさ、今日は話があって・・・」


私はゆっくりと話始めた。


「うん」


圭は、顔色を変えずに頷いた。


「あっ、これバレンタインの・・・・チョコ・・・ケーキ作ったの」


「まじで?」


一気に圭の顔が明るくなる。


ケーキを渡すとさらに圭のテンションが上がった


「大きいね。これ、俺もらっていいの?」


「うん。圭のために作ったから」


圭が真剣な顔になった。


奈緒!勇気を出して、言うんやで!


頑張れ!!



「私、圭のことが好きです。付き合って下さい!」


言えた・・・・・。


言えたよ。


二人の間に沈黙が続く・・・・。


なんで何も言ってくれないの??


圭の表情は・・・強張ってる。


どうしよう。


泣きそう・・・・。


足が震えて来たよ。




「・・・ごめん」



圭は静かに言った。



いや!聞きたくない!


ごめんなんて、聞きたくないよ!


圭の顔が見れないよ。


「もう・・・」


「それ以上言わんといて!」


私は圭の言葉にかぶせて言い放った。


もう拒絶の言葉なんて聞きたくない!


「心配しないで。もう、連絡もしないから・・・」


私はそのまま圭に背を向けて走り出していた。


泣きそう・・・泣きそう・・・。


でも電車で泣いたらあかん・・・。


私は涙を堪えるのに必死だった。


堪えに堪えた涙は自分の部屋に入るなり、こぼれ落ちた。



つらいよ・・・・。


なんで?


私だったら駄目なの?


私は食事も摂らずに、泣き続けた。





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