【完結】無口な王子様
圭の過去(隆目線)



最近、圭が変わった。前より感情を表に出すようになった。


それはきっと、橋本さんのおかげだろう。


あれは、橋本さんに初めて会った日の翌日。



******

「圭、おはよう」


「おはよう」


あれ?いつも『あぁ』だけやのに。


しかも、なんだか表情が柔らかくなってるし。


なんかいいことがあったんかな?くらいにしか思っていなかった。


「圭、橋本さんとはどうなんや?」


ニヤニヤし?ながら木下が圭に近づいて来た。


「いや、別に・・・」


とぶっきらぼうに言う圭の顔は若干赤かった。



「別にって・・・あの子圭と違ってよくしゃべるみたいやしな・・・合わなかったか?」


「・・・・・・」


「まぁ、また違う子紹介してやるから」


「もう、いいよ」




******

俺はこの時の、『もう、いいよ』が、『橋本さんがいるからもういいよ』と言ってるように聞こえた。



それ以来、少しずつだが以前のような圭が戻ってきていた。



俺らにあえて話はしないが、二人は時々遊んでいたみたいだから、黙って見守っていた。


聞かなくても圭の表情でうまくいっているのがわかったから。



でも・・・今日はどうしたんや?



昔の圭だ・・・・・・。



あの何を考えているのかわからない目



無表情な顔つき



やる気のなさそうな態度



周りを寄せ付けないように雰囲気。


何があったんや。


圭、お前に何があったんや?


また何か言われたのか?


でも俺は、どうしたらいいかわからなかった。





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