【完結】無口な王子様
その日の放課後、俺は圭の家に行った。
「テキトーに座って。飲み物でも持って来るから」
「ありがとう」
圭の部屋はシンプルで整頓されていた。部屋は夕日で赤く染まっていた。
「ごめん。オレンジジュースしかなかった」
「いいよ。サンキュー」
「はぁ・・・」
圭は俯き、大きなため息をついた。その表情の暗さに、俺はすぐには話し掛けることができなかった。
「・・・俺、めちゃくちゃ嬉しかったんや」
そう言って俺の顔を見る圭は、口を歪ませて笑っていた。
その後、ゆっくりと圭は話し始めた。
圭は大好きな子に告白されて、嬉しくてしかたなかった。
確かに、圭は彼女と付き合い出してから、顔つきが柔らかくなっていた。それが彼女には気に入らなかったらしい。
「彼女は、俺のクールなところが好きだったんやって」
「クール?」
「そう。クールなところ。つまり、笑ってるところは、必要ないってこと」
「はぁ?意味わからん」
「だよな・・・俺はロボットか!つうの」
圭は自虐的に笑っていた。
その作り笑顔が悲しくて・・・俺はなぜか涙を流していた。
それは、きっと一人で泣けない圭のために出て来た涙だったのだろう。
「おい!隆。何泣いてるねん!」
涙ぐむ圭が俺に言った。
「圭こそ泣いてるやん」
「俺は張本人やからいいんや。お前はあほか」
「あほやけど、悪いか?」
「いいや。ありがとうよ」
「まぁ、これも経験や!」
「そうやな」
そう言って俺らは笑い合った。