【完結】無口な王子様
ある日の放課後、家に隆が訪ねて来てくれた。しかし俺は『会いたくない』と帰した。
「圭、隆くんから伝言。ここに置いて行くからね」
勝手に部屋に入って来た母さんは、机に紙切れを置き、ベッドに寝転ぶ俺を見てた言った。
「あんたは幸せやね。こんなにあんたのことを考えてくれる友達がいて」
母さんは俺がこうなった理由なんて何も聞かずに、部屋を出た。
それは俺に興味がないのではなく、手助けをする問題ではないと感じたんだろう。
俺は母さんが置いて行った紙切れを眺めた。
黒いペンで書かれた文字が見える。
俺は机の前に立ち、その文字を読んだ。
『俺は最近の圭が大好きだった。変えてくれたのは橋本さんなんやろ?
俺は彼女のことは何も知らないけど、圭を元に戻してくれる子だと感じていたよ。
彼女なら、圭の全てを受け止めてくれるんじゃないかな?
隆より』
隆・・・・・。
お前には・・・なんでわかってしまうんや。
何も話してないのに・・・・。
俺の心に少しだけ光が差し込んできたように感じた。
・・・明日から3月か。
2週間、電源を切ったままの携帯の電源を入れ、日付を確認する。
知らず知らずのうちに、待受には『橋本奈緒』の文字が・・・。
でも掛けることなんてできなかった。
あの笑顔を見たい。
話をしたい。
一緒にいたい。
そう思う自分がいた。