【完結】無口な王子様
レストランに着くと、すでに2組は揃っていた。
「奈緒たち、いなくなるんやもん」
わざとらしく理香が言う。
よく言うわ。
でもありがとう。
食事をしながら他の二組を見ると、話が弾んでいている。
「あいつら、俺らのことなんて見えてないな」
梶原くんがボソッと言う。
「そうやね」
と言い、目の前のオムライスを食べた。
オムライスを噛み締めて食べていると、梶原くんと目が合った。
その目は嬉しそうに笑っていた。
「ホント、うまそうに食べるよな〜」
梶原くんは、食べる手を止めて、初めて歯を見せて笑ってくれた。
「へっ?」
素っ頓狂な声が出てしまった。
「初めて会った時から思ってたんやけど、うまそうに食べるから、そんなにうまいのか?って食べたくなる」
彼は、左手で頬杖をつき、真っすぐ私を見て言った。
その目は、とても優しくて一瞬にして心臓を鷲掴みされた。
さりげなく手を繋いだり、見つめられたり馴れてないんやから・・・。
「じゃぁ、私の食べる??」
何言ってるの、私!?
「うん。じゃあ、俺の食べていいから」
梶原くんは、使っていたスプーンは残し、お皿を持ち上げて私の方に差し出してくれたので、私も同じようにし、お互いのオムライスを交換した。
梶原くん、あんた反則ですよ!
言いだしっぺは、私か・・・。
梶原くんは、一口が大きくて、食べた後はしばらく話せないくらい、モゴモゴしてる。
その食べ方がかわいい。
「梶原くん、入れすぎ」
「ん゛?」
「ほら入れすぎてしゃべれないやん!」
「・・・・・・」
まだモゴモゴしてる。
「ぷっ」
また笑ってしまった。
「まだ、わりゃった」
何言ってるかわからんし。
「ちゃんと、口の中の物がなくなってからしゃべってください」
「はぁい」
このどうでもいい会話が楽しい。
「あっ、そうだ。圭って呼んでくれたらいいで」
「け、けい?」
「嫌ならいいけど・・・」
「嫌じゃないよ。じゃぁ、私の事も奈緒って呼んでね」
「うん」
少し赤くなって俯く姿にキュンとしてしまった。