エリート同期のプロポーズ!?
元々そんなによく知っているわけではなくて。


付き合っている、とは言え、こうやって二人で話すのも、まだ片手で数えられるくらい。


だけど、それでも。


いろんな絢斗君の姿を見てきたけど、初めてのパターン……。


一体なんなんだろう。



「……送るよ」


ベンチに座ったまんまのあたしを、静かに見下ろす絢斗君の姿。


月の光を背に、すらりとしていて。


すっと目の前に出された手を掴もうかどうか、しばし迷ってしまう。


恐る恐る触れた手は、とても優しく握り返されて、ちょっとほっとする。


「……ありがとう。途中までで大丈夫だから、駅まで一緒に帰ろう」


「危な……」


「野犬は出ないから大丈夫!」


絢斗君がやっと、あたしの知っている顔で笑った。
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