エリート同期のプロポーズ!?
「えーと、ふ、普通の人……」


「なんだよそれ!!」


絢斗君が楽しそうに笑っている……よかった。


「だってもう、随分前の話だし……」


そう、ごく普通の人だった。


だからこそ、ごく普通に恋愛して、ごく普通に彼と結婚するもんだとばかり思っていた。


多くを求めたことなんてない。


その、『基盤』が根底から覆された時、あたしは本当にこの世の終わりだと思っていたっけ。



小さい頃から信じて疑わなかった『お嫁さん』という夢は、努力しないと手に入らない、とやっと気がついたあたし。


「普通の人かぁ……で、好きな人はいなかったんだっけ?」


「それ、前も聞いてきたじゃん!いたら付き合ってないでしょー?」


言いながらその自分の台詞の空々しさにぞっとする。


さっき、ベンチから引き上げる為に、手を握られた時。


昔のことを聞かれた時。


……何度も何故か央の顔が浮かんでいて。
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