私の師匠は沖田総司です【上】
「……何あれ。桜木さんってあんなキャラだったの?なんだかガッカリ」

「仕方ないよ。私のせいだから」

「蒼蝶ちゃんが気にすることないよ。ほら、帰ろう」

詩織が落ち込む私の手を引いてくれる。

結局詩織は私の家の近くまで送ってくれた。

「ここまでありがとうね」

「いいよ。じゃあ、また明日ね」

「うん」

詩織は笑顔で帰って行く。私は詩織の姿が見えなくなるまでその姿を見送っていた。

「師匠……」

『なに?』

「私はあの時、勝ってよかったのでしょうか」

試合の後からずっと思ってたことだ。その思いがずっと自分の中でグルグルと渦巻いている。

すると師匠は少し溜息を吐いた。

『当然でしょ?これであの桜木って子は蒼蝶を倒すために、さらに稽古をするはずだ。

人は敗北を知って、さらに強くなる。蒼蝶は良いことをしたんだよ』

師匠はそう言ってくれるけど、胸の中のモヤモヤは消えてくれない。

あの時私が勝たなければ、桜木さんは傷つくことはなかったんだ。

恨まれることもなかった。睨まれることだって……。

『蒼蝶』

「イタッ」

師匠が私の頭を軽く小突いた。

師匠は軽くのつもりでしょうが、結構痛いです。

『早く稽古をするよ。今日こそ三段突きを完成させるんだ』

「……はい」

私は家に帰りつくと、ジャージに着替え、竹刀を持って庭に出た。
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