私の師匠は沖田総司です【上】
だからこそ気になる。彼女がどうして屯所から飛び出したのか。

「一君」

「ああ」

一君は僕の考えていることがすぐに分かったらしく、間を開けることなく頷いてくれた。

「先に戻っていろ。俺と総司はまだ用がある」

「分かりました」

隊士達に声を掛けた後、すぐに僕たちは天宮さんの後を追った。

もし、本当に彼女が脱走だったらどうしようかな。

もちろん、斬り合いになることは避けられない。

新選組、局中法度の一つ『局を脱するを許さず』。

決まりを守れなかった者は裏切り者と見なし、切腹または粛清の対象となる。

天宮さんはまだ隊士ではないけど、局中法度の対象者だろう。

できれば、彼女が脱走じゃないことを願う。

彼女とは、普通の試合でまた戦いたいからね。

法度破りで刀を交えるなんて絶対イヤだ。

天宮さんとは正々堂々、試合で勝つのだから。
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