私の師匠は沖田総司です【上】
「確かにそうだな。おい、誰か縄と布を持ってこい」

周りにいた男が縄と布を持ってくる為にこの場から離れる。

このままでは捕まる。捕まったら、二度と新選組には戻れない。

そう直感した途端、体の奥から恐怖が溢れ体が震えた。

「いや!!」

逃げないと……早く、逃げないと。

体を起き上がらせましたが、すぐに地面に押し付けられてしまいました。

それでも逃れようと、手足をバタバタさせる。しかし、男の力に敵うわけもなく、無意味な抵抗に終わってしまう。

「大人しくしとけよ。傷物にしたくねえんだからよ」

男が私の顔を持ち上げ、撫でるように唇を触れる。

気持ち悪い、触らないでよ……!

咄嗟に口を開け、男の指に力一杯噛みついた。

ゴキッと鈍い音が聞こえた。

前歯が指の皮膚を裂き、骨まで届いたのかもしれない。

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!俺の指がぁぁぁ!!」

男が私の口から指を引き抜く。男の悲鳴に私を押さえていた力が緩む。

私はその隙を見逃さず、渾身の力で相手を突き飛ばし、距離をとった。

「はぁ、はぁ……」

口の中に広がる鉄の味。

私は鉄の味を唾と共に地面に吐き出した。

「てっ、てめぇ……!おい、そいつを押さえろ!!」

噛まれた指を押さえながら男が周りに号令を掛ける。

縮む、敵と私の距離。

私はすぐさま刀を抜いて、構えた。
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