私の師匠は沖田総司です【上】
「島原に行った日、俺と左之さん新八さんの三人で、おめェの部屋に行ったことを覚えてるか?」

「はい」

私の部屋で柔軟測定をした日ですね。

永倉さんと原田さんの体が硬くて、藤堂さんが意外とやわらかかったのを覚えています。

「天宮を擽(クスグ)りの刑にしている時、新八さんが俺たちが兄妹みたいって言ったんでさァ。

俺、出世が複雑で家族がどんなのかよく分からねェんだ。だからこそ、家族にちょっと憧れててさ。

それで、新八さんの言葉をきっかけに、もし俺に妹がいたらこんな感じなのかなって思ったんだ。

それからおめェともっと仲良くなりたかったんだけど……。

俺不器用だから、どう接したらいいか分からなくて、それでおめェに色々命令しちゃったんでさァ」

藤堂さんが少しシュンとしながら頭を掻いた。

「今までのは愛情の裏返しだったんですか?」

そう言うと、藤堂さんはコクリと頷いた。

「そうだったんですか。私、藤堂さんに妹として愛されていたんですね」

「イヤだったか?……そりゃイヤだよな。俺、口も悪ィし、喧嘩っ早いところがあるからな。

品行の悪さを何度も近藤さんに注意されてるけど、全くもって治らねェし。こんな奴から妹みたいに思われたら、イヤだよな」

「私、藤堂さんに妹と思われて、イヤだとは思いませんよ。確かにちょっとイジワルですけど、藤堂さんのことは嫌いではありません。

むしろ好きな方です」

まだ数日しか共に過ごしていないけど、初めて会った時に比べ、藤堂さんへの印象は変わっていました。

イジワルなところもあるけど、私が本当に疲れていた時には、お茶を淹れたりしてくれましたからね。

本当は優しい人なんだと分かっていました。
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