私の師匠は沖田総司です【上】
龍馬さんの直感の良さに脱帽といわざるをえません。

やはり龍馬さんは普通の人とは違うのだと、心底思いました。

「それよりもおまえとの関係は?」

「あっ、そうでしたね。幽霊さんは私の剣術の師匠なんです」

「幽霊が剣術の師匠……。じゃあ、おまえが刀を握るきっかけを作ったのはそいつか」

握られた右手に力が込められる。

龍馬さんを見れば、少し目を細めて怒っているようにも見えました。

もしかしたら、人を斬った私のことを考えているのでしょうか?

「……確かに師匠がいなければ、私は人を斬らなくてよかったかもしれません。でも、私は師匠と出会ったことを間違いだと思いません」

「でも」

何か言いたそうに口ごもる龍馬さんに向かって私は、少しだけ微笑みました。

「私は師匠に出会えて本当によかったと、心の底から思える。もし、私が師匠に出会ってなかったら……今頃私は」

一度言葉を切って、空を仰ぐ。

そして口を開きました。

「生きることが苦痛でした」

私の言葉に、手を握る龍馬さんの手がピクッと反応する。

私は目線を龍馬さんに戻しました。

「少し、長くなりますけど、私と師匠の話を聞いてくれませんか?」

「分かった」

「ありがとうございます。……私が師匠と出会ったのは、私がまだ5歳の時です」

目を閉じれば蘇る、師匠との出会い。

私が師匠と出会った場所は、病院の庭に隠れるようにして植えられた桜の木の下だった。
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