私の師匠は沖田総司です【上】
ある日。

いつものように外を眺めていると、病院の庭に隠れようにして植えられた桜の木の根元に、人影がありました。

「誰だろう?」

いつも窓から外を眺めている私でしたが、桜の木に人影があったのは初めてでした。

そこにいたのは着物を着た青年で、特に何かをする訳でもなく、桜の根元に座っていました。

私は突如現れた青年に興味を持ち、しばらく観察することにしました。

それから青年は毎日、桜の木の下に現れました。

雨の日も、風が強い日も、毎日そこにいて、一日中桜の根元に座っています。

そして、観察している途中、気付いたことがありました。

「蒼蝶ちゃん、何を見てるの?」

病室に来た看護師のお姉さんが青年を眺める私に言いました。

「あのね、桜の木の下にお兄ちゃんがいるの」

「お兄ちゃん?どこかな?」

「ほら、あそこ」

私が指を差しますが、お姉さんは首を傾げるだけでした。

その後も色々な人に青年のことを話しましたが、結果全部最初の人と同じ反応でした。

しばらくして、あの青年は私にしか見えないのだと気付きました。
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