私の師匠は沖田総司です【上】
それから数日後。天気が良く、桜が満開に咲いた日。

私は勇気を出して、その青年に会いに行こうと思いました。

その前に、ベットの横にある棚の上に置かれたアルミの箱に手を伸ばしました。

箱の中にはクッキーや飴玉、煎餅など、幅広い種類のお菓子が入っていました。

仕事が忙しくてあまり病院に来れない両親が私のために用意してくれた物です。

私はその中から、袋に包まれた球体のロリポップを二つ手に取りました。

飴を持った私は、看護師さんに見つからないように病室を出ました。

そして、泥棒のように足音を消しながら外に出る。

トテトテと小走りで、目的の場所へと向かいました。

ずっと病室に篭(コモ)りっきりだった私の身体は重くて、病室から桜まで行くだけで息切れがしました。

息を切らしながら窓から見えていた場所に着けば、青年はそこにいました。

私はこの時、初めて青年の顔を見たのです。

綺麗に整った顔は冷たい感じがして、心が無いような、カラッポな感じました。

遠くを見る目には光がない。

身体全体から寂しさのようなものを感じました。

思わず私は青年に話し掛けて良いのか迷いました。

でも、ロリポップを持った手をギュッと握りしめ、私は一歩一歩慎重に近づきました。
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