私の師匠は沖田総司です【上】
「およ?」

青年の冷たい手が私の頬に触れました。

「およよよよよよ」

そして、私の頬をマッサージするように揉み始めました。

私はいやではなかったので、青年のされるがままになっていました。

しばらく青年は私の顔を弄んでいましたが、不意に手をとめました。

『触れる……、あたたかい……』

掠れた声で、目には涙が浮かんでいるように見えました。

青年が泣いているのを私は見てギョッとしました。

「どうしたの?どこか痛いの?お医者さん呼ぶ?」

『ううん、大丈夫だよ。でも、しばらくこのままでいさせて……』

私の頬から手を離すと、青年は私の身体を抱きしめました。

やわらかく、まるで体温を確かめるように抱きしめられる。

私はどうすればいいのか分からず、青年の腕の中でじっとしていました。

『君の名前、教えてくれる?』

青年の声が耳を擽りました。

「私は蒼蝶。蒼い蝶って書いて蒼蝶だよ」

『蒼蝶か、とても可愛い名前だね。僕は沖田総司。蒼蝶、僕を見つけてくれてありがとう』

これが幽霊の青年、沖田総司との出会いでした。
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