私の師匠は沖田総司です【上】
「お兄ちゃん、病気で死んだって言ってなかったけ?」

『う゛っ……』

お兄ちゃんが言葉を詰まらせ、目が明後日の方向を見ます。

「ねーねー、おにーちゃん」

『……その病気は気を付けても掛かっちゃう病気だったんだよ。決して油断したとか、食べ物を好き嫌いした訳じゃないから』

普通、視線逸らされながら言われても説得力はありませんよね。

でも、その頃の私はまだ子供だったので

「そうだったんだ」

普通に信じました。

「蒼蝶もお兄ちゃんみたいに剣道をしたら、身体が強くなるかな?剣道って何をするの?」

剣道をよく知らない私は首を傾げました。

名前は聞いたことがあったのですが、何をするのかまでは知りませんでした。

お兄ちゃんは私を胡坐から降ろすと、何かを探し始めました。

しばらく待っていると、お兄ちゃんは木の棒を持ってきました。

『これは木の棒だけど、剣道は竹刀って言う竹で作られた刀剣を使うんだ。剣道では竹刀を使って稽古をしたり、一対一の試合をしたりする。

竹刀を使って、身体だけじゃなくて心も鍛えるんだ』

「へぇー」

『基本的な稽古は素振りだね。こうやって振り被って、大きく振り降ろす』

木の棒が空気を裂く音と共に、力強く降り下ろされた。
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