私の師匠は沖田総司です【上】
生まれて初めて聞いた音に、私は全身がゾクリと震えた。

そして何よりお兄ちゃんが素振りをする姿と、強い光が宿った瞳がとてもカッコイイと思いました。

私は奮い立つような衝動が抑えきれなくて、勢いよくお兄ちゃんに抱き着きました。

「お兄ちゃん、蒼蝶にも剣道を教えて!」

『うん、いいよ』

お兄ちゃんはすぐに木の棒で竹刀の握り方を教えてくれました。

『右足は前に出して、背筋を伸ばす。木の棒はあまり強く握っちゃダメだよ。強く握り過ぎると、ぎこちない動きになるから』

基本的な立ち方と握り方を習った後、お兄ちゃんに手を添えて貰いながら数回素振りをしました。

『さっ、やってみて』

「うん」

一人で素振りをしてみましたが、お兄ちゃんのような音は出ませんでした。

「できない……」

『まだ一回目だからね、落ち込むことはないよ』

「うん、そうだね。もう一回!」

もう一度、木の棒を振りますが結果は最初と同じでした。

私は諦めたくなくて、素振りを続けました。

でも、ほんの数回素振りしただけで、私は息を切らしてしまいます。

私は自分の体力のなさを痛感しました。

『蒼蝶にはまだ素振りは早いみたいだね。まずは基礎体力をつけないと』

「……お兄ちゃん」

『ん?』

「体力付けたら、もっと剣道を教えてくれる?」
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