私の師匠は沖田総司です【上】
ある日、両親が病院に来てくれました。

「あのね、今日はお兄ちゃんに、面の打ち方を教えてもらったの。面を打つのにも二つあってね、手首を使って打つのが小さい面。大きく振りかぶって打つのが、大きい面なんだよ」

「そうなの。よかったね」

「うん!」

病院のベットの上で、素振りの真似をする私を見て、お父さんとお母さんが微笑んでくれます。

両親にも、お兄ちゃんのことを話していました。

もちろん、幽霊であることは秘密です。

「本当に蒼蝶は良い顔をするようになったな。毎日が楽しそうだ」

「毎日楽しいよ。だってお兄ちゃん、剣道を沢山教えてくるれから!」

「そのお兄ちゃんは、蒼蝶の剣道のお師匠様なのね」

「お師匠様?」

「師匠って言うのは、先生のことだよ」

お母さんの言葉に首を傾げていると、お父さんが説明してくれました。

「お兄ちゃんが師匠なら、蒼蝶は何なの?」

「蒼蝶は、お兄ちゃんのお弟子さんよ。お弟子さんは、師匠からの教えを受け継ぐ人なの」

「教えを受け継ぐ人……」

私は思わず、その言葉を繰り返しました。
< 196 / 472 >

この作品をシェア

pagetop