私の師匠は沖田総司です【上】
「やっぱり女の子は可愛らしい発想するね」

「そうですか?」

「そうだよ。男は金平糖を見て、星の形みたいなんて言わないよ」

組長がクスクスと笑いながら、翳していた金平糖を食べました。

そして数回金平糖を歯で砕く音がした後、組長の目尻がへにゃんと下がりました。

何て幸せそうな顔でしょう。見てるこっちも癒されます。

今の組長は新選組一の剣豪と、恐れられている人には見えませんね。

普通に甘味を食べて幸せそうな青年です。

でも一度(ヒトタビ)刀を抜けば、無情の人斬りに変貌すると誰かが言っていました。

無情の人斬り……。

「組長」

「ん?」

「人を斬る時、組長は何を考えているんですか?」

私の質問に組長は目を見開きます。そして、目を伏せると私から顔を逸らしました。

「……僕は目の前の敵を斬ることだけを考えてるよ。余計なことは一切考えないようにしてる。

少しでも心が迷えば、それはすぐに刀に反映される。剣術の稽古をしている君なら分かるでしょ?」

「はい」

「刀が迷えば斬る場所がずれる。斬る場所を誤れば、相手に更なる苦しみを味あわせてしまう。

僕は人を斬る時はできるだけ、相手が苦しまないように、一撃で仕留めるようにしているんだ。だから余計なことは一切考えない」
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