私の師匠は沖田総司です【上】
私は組長の言葉をじっと聞いていました。

組長は、相手が苦しまないように一撃で倒す。

その為に人を斬る時は余計なことは考えない。

不意に、昨夜に見た夢の光景が脳裏を過りました。

無意識に手が握り拳を作る。

「どうしたの、大丈夫?」

黙ったままの私に向かって組長が言いました。

意識を取り戻した私は、すぐに笑顔を作ります。

「ちょっと考えことをしていただけですから、大丈夫です」

「そっか」

「はい」

目線を前に戻して、西に沈みかけている夕日を眺めました。

組長の言葉を聞いて、私の心に変化が起きたのを感じていた。

再び手に力が込められる。

「総司、こんな所にいたんだね」

「源さん」

いつの間にか井上さんがいました。

料理をしていたのか、前掛けを着けています。

「もうすぐ夕食なのに総司はまた甘い物を食べたんだね」

「あっ」

組長が金平糖が入った巾着を後ろに隠しますが、もう手遅れですね。

組長の様子に井上さんが一つ溜め息をつきます。

「あまり甘い物を食べたら駄目だよ。それよりもほら、夕食の準備ができたから広間に行ってくれ」

「はい、分かりました。天宮さんはどうする?」

「今日は御一緒します」

「そっか。だったら一緒に行こう」

「はい」

私は組長の後ろをついて行きました。
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