私の師匠は沖田総司です【上】
***

その場に一人取り残された僕は、只々呆然としていた。

天宮さん……あれ、完全に怒ってたよね。いくら馬鹿でもそれは分かる。

少し前までいくら僕に酷い言葉を言われても、彼女はあれほど怒らなかった。

だから彼女が怒った姿を見たのは初めてだ。

僕はどうしたらいいのか分からなった。それよりもどうして怒ったのか分からない。

最悪だ……。

僕の隊に入隊してすぐに喧嘩したなんて、笑い話にもならないよ。

「ん?どうした総司」

「珍しくしょげた面してますね。また甘味切れですかィ?」

「一君、平助ェ……」

偶然通りかかった一君と平助。

僕が二人の名前を言った瞬間、平助が何かを感じ取ったのか、すごくイヤそうな顔をした。

「斎藤君、このままどっかにいきませんか?絶対面倒事に巻き込まれやすぜ。しかも相当な奴でさァ」

「そうだな」

すぐに二人は迷うことなく、来た道を引き返そうとする。

「ちょっとちょっと!先に話し掛けてきたのはそっちなのに、放って置くってどういうこと!?」

僕は二人の手を掴んで引き留めた。

二人が僕の手を振り解こうとするけど、意地でも離すもんか!

「話!僕の話だけでも聞いてよ!お願いだから!」

「……まぁ、話だけならいいか」

「そうですねィ」
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