私の師匠は沖田総司です【上】
場所を壬生寺に変えた後、僕はさっきのことを話した。

そして話し終えて二人の方を見たんだけど

「二人とも、すごい顔をしてるよ……」

正直一君と平助の顔は見れたものじゃなかった。顔全体から僕を蔑(サゲス)んでいるということが分かる。

さっき近藤さんたちも二人と同じような顔をしてたけど、これほどじゃなかった。

ちょっとして一君がポツリと呟いた。

「馬鹿だな」

「正真正銘の馬鹿……いや、大馬鹿者でさァ」

「仲間に対して容赦ない一言だね」

平助が僕に見せつけるように盛大に溜息を吐く。僕は思わずムッとなる。

「平助は天宮さんが怒った理由が分かるの?」

「蒼蝶が怒った理由も分からねェなんて、ますます馬鹿ですねィ。そんなもん分かってますぜ。

前々から総司は人の気持ちに鈍感だとは思ってやしたが、これはもう呆れて物も言えませんぜ。開いた口が塞がらないとは正にこのこと」

「馬鹿馬鹿馬鹿、大馬鹿が」

一君、馬鹿って単語をあまり連呼しないで。言われる度に傷つくから。

平助はもう一度、溜息を吐くと、座っていた石段から腰を上げた。

「先に屯所に戻ってますぜ。蒼蝶が心配ですから」

「ああ、そうしてくれ」

平助が寺の門を潜り、屯所に戻った。壬生寺には僕と一君だけになる。
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