私の師匠は沖田総司です【上】
「ねえ、一君。君も天宮さんが怒った理由が分かる?」

「もちろんだ」

「……よろしければ、僕に教えてくれませんか?」

「断る」

「ケチ」

一君だったら、そう言うと思ってたよ。一君の性格からして、簡単に答えを教えてくれそうにないもんね。

でもさ

「助言ぐらい頂戴よ」

と言ったら、一君は平助と同じように呆れたように溜息を吐いた。

「おまえが近藤局長に信頼していないと言われたらどう思う」

「近藤さんがそんなこと言うはずない」

「例えばの話だ」

僕はう~んと唸りながら考えた。

もし、と言うか絶対ありえないけど、近藤さんから信頼してないって言われたらすごく悲しい。

悲しすぎてたぶん生きる意味を無くす。

9歳の頃、天然理心流の道場の試衛館に内弟子として預けられた時、誰よりも親身になって接してくれたのが近藤さんだった。

体が弱くて、チビのくせにクソ生意気な子供だった僕は、道場の兄弟子達の格好の獲物になっていた。

ご飯をひっくり返されるのはいつものこと、竹刀で叩かれることもよくあった。

その度に、近藤さんがどこからともなく飛んできて、僕を助けてくれたんだ。

そして自分の稽古の時間を割いて、僕に剣術を教えてくれた。

いつしか僕は兄弟子たちよりも強くなった。

僕は近藤さんから自分を護る力をもらったんだ。
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